問題提起文とは、ビジネスが直面している問題と、その解決策を短く簡潔に説明したものです。問題提起文は、問題を定義し、解決策を短時間で周知する効果的な方法として用いることができます。問題提起文を書く前には問題と自分が提案したい解決策について考察し、裏付けとなる事実も記載することを忘れないようにしましょう。
ステップ
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「理想的」状況を記述する 問題提起文を書くにはいくつかの方法があります。すぐに問題自体を論じるべきというアドバイスもあれば、読者が理解しやすいように、まずは背後の文脈を説明してから問題に取り組むことが推奨される場合もあります。どちらの方法を採用するか迷った場合は、後者の方法を選びましょう。実用文書では簡潔な文章を目標にすべきとはいえ、読者の理解を得ることは非常に大切です。問題の考察に入る前に、まずは物事がどう「あるべきか」の記述を行い、背景を明らかにします。当該の問題が存在しなければ「こうなるはずだ」という状況を数行で説明しましょう。
- 例えば、大手航空会社に勤務していて、現状の搭乗手続きには時間とリソースの使い方の面で非効率な点があることに気付いたとします。この場合、例えば、搭乗のプロセスが非効率的でない状況、つまり会社が目標とするべき理想的状況について下記のような説明を行い、問題提起文の出だしとします。「ABC航空の搭乗手続きは、各フライトの乗客を迅速かつ効率よく搭乗させ、できるだけ早く離陸させることを目標とするべきです。搭乗のプロセスは、時間効率のために最適化すべきですが、同時に乗客が容易に理解できる単純な手続きであるべきです」
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問題点を説明する 発明家のチャールズ・ケタリングは、「問題がうまく記述できれば、半分は解決したようなものだ」との名言を残しました。問題提起文の目的の中で最も重要なのは、読み手に対してその問題を単純明快に説明することと言っても過言ではありません。解決したい問題を簡潔に要約します。直ちに問題の核心に切り込み、最重要事項を冒頭の最も目に付く場所に置きます。「理想的」状態を記述した後、次の文を「しかしながら...」あるいは「残念ながら...」で始め、提起される問題が、理想の実現の障害となることを示します。
- 例えば典型的な「後方座席から詰めていく」システムと比べ、より迅速かつ効率的な搭乗システムを開発したとしましょう。この場合、数文使って以下のように続けます。「しかしながら、ABC航空の現在の搭乗システムは時間およびリソースの活用の面で非効率的です。社員のマンアワーが無駄になる現在の搭乗手続きは、当社の競争力を弱め、また搭乗遅延が発生すると、ブランドイメージが損なわれることになります」
- 説明の際には、問題の緊急性を強調するようにしましょう。
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問題の経済的コストを提示する 問題を記述した後、なぜそれが重大な問題なのかを説明します。読み手には小さな問題にこだわる余裕はありません。ビジネスの世界では、大抵コストと利益が主要な懸案事項なので、問題の会社や組織への財務的影響を強調するべきです。例えば、この問題は会社の収益を低減するのか、積極的にコスト増大につながるのか、ブランドイメージを損なうことで間接的に会社の損失につながるのか、という点を論じます。問題の財務的負担については、正確かつ具体的なものにします。問題のコストについて、具体的な金額(あるいは根拠を明らかにした上での推定額)を記述します。
- 航空会社の例では、議題にした問題に関する財務費用についての記述は次のようになります。「現在の搭乗システムの非効率性は、当社にとって多大な財務上の負担となっています。現在の搭乗システムでは1回の搭乗プロセスに平均約4分が無駄に費やされており、その結果、ABC航空の全フライトを総合すると、1日あたり20人日の浪費に値します。つまり、1日あたりおよそ4万円、年間で1,500万円近くのコストが無駄に費やされていることになります」
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主張の論拠を示す いくら無駄なコストだと主張しても、妥当な証拠を論拠にしないことには真剣に取扱って貰えません。問題が深刻であると具体的な主張を記述し始めると同時に、証拠を示して主張の論拠を明らかにする必要があります。場合によっては、独自の調査結果、関連する研究やプロジェクトのデータ、または信頼できる第三者の情報源を利用します。
- 業務上あるいは学術論文としての問題提起書では、論拠となる文献を明示的に参照する必要がある場合もありますが、そうでない場合には 脚注 や省略した形式の引用で十分です。どうすべきか迷った場合は上司か教授にアドバイスを貰います。
- 文章を見直しましょう。先の文章では、問題によって発生するコストについては論じましたが、数字の根拠については記述していません。より詳しい説明を添えて、以下のように記述します。「...社内パフォーマンス追跡システムのデータによると [1] 、現在の搭乗システムでは1回の搭乗プロセスに平均約4分が無駄に費やされており、その結果、ABC航空の全フライトを総計すると、1日あたり20人日の浪費に値します。空港勤務の平均時給は2,000円であり、上記のコストは1日4万円、年間で1,500万円近くの無駄となります」上記の脚注に注意しましょう。実際の問題提起文では参照したデータの脚注あるいは添付資料に相当します。
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解決策を提案する 何が問題なのか、なぜそれが重要なのかを論じた後、その問題にどう対処すべきかを論じます。最初の問題提起と同様、解決策についての説明は、できるだけ明瞭かつ簡潔に書くべきです。まずは重要で具体的な包括的アイデアの提案に留め、細かい説明は後で行います。解決策についての詳細を論じる機会は提案書の本文中にいくらでもあります。
- 航空会社の例では、効率の悪い既存の搭乗手続きの問題に対する解決策は、新たに見出した新しい搭乗手続きプロセスであり、細かい点には触れずにそのプロセスの概要をざっくり説明します。例えば以下のように記述します。「カウラード経営効率協会のエドワード・ライト博士が提案した搭乗システムを使用し、乗客を後部から前方に向かって搭乗させるのではなく、横から登場させた場合、ABC航空はこの4分間の無駄をなくすことができます」次に、新しいシステムの基本的な主旨を説明しますが、分析の「肉」は提案書の本文で論じることになるので、ここでは数文にまとめます。
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解決策の利点を説明する 「問題にどう対処すべきか」を論じたので、次に「なぜその対処策がよいアイデアなのか」を説明します。どの企業も常に効率を高め、利益の増加を目標とするため、主に解決策の財務的影響に焦点を当てるべきです。どのようなコストを削減できるのか、どのような新たな収益形態が発生しうるか、などを論じます。顧客満足度の向上のような具体的価値に換算できない利益については触れても構いませんが、数文に抑えます。
- 上記の例では、この解決策で削減されたコストによってどのような利益を得ることができるかを簡単に説明します。例えば以下のような数文を加えます。「ABC航空は、この新しい搭乗プログラムの採用により、大幅な利益を得ることになります。例えば、推定年間1,500万円のコスト削減分を、需要の多い地域へのフライトの選択肢拡大などの新たな収益源に向け直すことが可能です。また、この対応策を採用した最初の日本の航空会社として、ABC航空は価値の創造と利便性の面で業界のトレンドセッターとして高い評価を得ることとなるでしょう」
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問題と解決策の要約で結ぶ 会社にとって理想的なビジョンを提示し、ビジョンの実現を妨げる問題を特定し、その問題の解決策を提案したのですから、問題提起書はほぼ完成です。問題提起文を主要な論点の要約で締めくくり、提案書の作成に作業を進めます。この結論部は必要以上に長く書く必要はありません。問題提起書で論じる内容と提案書でのアプローチについて基本的な要点を数文にまとめます。
- 航空会社の例では以下のようになります。「現状の搭乗手続きの最適化や新しい効率的な手続きの採用は、当社の競争力を維持する上で極めて重要です。提案書では、ライト博士によって開発された搭乗手続きの新たな方法についての実現可能性について分析を行い、効率のよい実施に向けたステップを提示します」以上が問題提起書作成の主なポイントの説明です。現在の搭乗手続きがあまり好ましくないこと、そして提案した新たな手続きが優れていることを指摘し、読み手に対して次なる論点を示します。
- その解決策を実行しなかった場合に起こりうる結果についても必ず言及します。
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学術論文では必ず主題文を記述する 業務上の文書ではなく、学校の課題のための問題提起文を書く場合もプロセスはほぼ同じですが、良い評価を得るためにはいくつか考慮すべき点があります。例えば、多くの論文クラスでは、問題提起文に主題文を含めることが要求されます。主題文(テーゼとも呼ばれる)は、議論全体を可能な限りそぎ落として要約した1文章です。優れた主題文は、問題と解決策をできるだけ簡潔かつ明確に特定するものです。
- 例えば、論文作成代行業の問題に関する論文を書くとします。すぐに提出できるように予め書かれた論文やオーダーメイドの論文を販売する会社のサービスを学生が利用することの弊害についての論文です。提示する問題とその解決策の提案をまとめた以下のようなテーゼを論文中に記述します。「学習過程を弱体化し、金銭的余裕のある学生が有利となる学術論文の販売活動については、強力なデジタル分析ツールを教授に提供することで対応できます」
- 問題提起文の特定の箇所(例えば冒頭あるいは結び等)でのテーゼの記述を必須とするクラスもありますが、どこにテーゼを持ってくるかは自由なケースもあります。どうするか不確かな場合は、教授に確認しましょう。
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概念的な問題についても同じプロセスを用いる 問題提起文は実際的・具体的な問題を扱うだけではありません。学術分野(とりわけ人文科学)の中には、概念的な問題を取り扱う分野もあり、抽象的な概念の考察を行います。この場合でも、基本的には上記同様の問題提起の枠組みを利用して対象とする問題を提示することが可能です(明らかに業務文書とは異なる観点になります)。言い換えれば、(概念的な問題については、よく理解されていない場合が多いため)問題を特定し、その問題の原因を究明し、解決方法を提示し、結論をまとめる、という枠組みを活用して論文の導入部とします。
- 例えば、フョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』における宗教的象徴主義の重要性に関する問題提起文の作成を依頼されたとしましょう。この場合の問題提起は、小説の宗教的象徴主義の理解しにくい部分の特定、それがなぜ重要であるかの説明(例えば、作品中の宗教的象徴主義をより深く理解することによって、新しい明察を見出すことが可能である等)、そしてその主張が妥当であることの議論をどのように進めていくのか、を論じます。
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簡潔にまとめる 問題提起を作成する際に留意すべきことがあるとすれば、文章を簡潔にまとめることです。読み手に問題とその解決策を提示する目的のために必要不可欠な長さを超えるべきではありません。一切の無駄を省き、上記の目的に沿わない文章は削除します。明瞭で直接的な言い回しを使います。取るに足りない細部で行き詰る必要はありません。問題と解決策の本質のみに注意を払います。一般的に言って、情報量はそのままで、文章は可能な限りそぎ落とした形にするべきです。
- 問題提起書は私的コメントあるいは「独自性」をアピールする場ではありません。それらを取り込むと、実用性に欠ける間延びした文章になります。問題の深刻さや読み手の熱意によっては、提案書で入りこんだ詳細な解説を長く記述できる機会が与えられる可能性があるので、細かい論議はそこで行います。
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読者を意識して記述する 問題提起文は、自分自身のために作成するのではなく、誰か他の読み手を対象とするものであることを決して忘れないようにしましょう。読み手の知識、読む理由、問題に対する意見は十人十色です。意図した読み手を念頭に、できるだけ理解が得られるよう、明瞭かつ容易に読める文章を心がけます。つまり読み手によっては、基調、書体、スタイル、および言葉遣いを工夫しなければならない場合もあります。以下の点に留意しましょう。
- 「誰を対象にして書いているのか?」
- 「なぜこの読み手を対象にしているのか?」
- 「読み手には文書中で使用される用語や概念の知識があるか?」
- 「読み手の問題に対する見解は、自分の意見と合致するか、否か?」
- 「読み手がこの問題に関心を持つ理由は何か?」
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定義せずに専門用語を使用しない 先に説明したように、問題提起書は、読み手ができるだけ理解しやすいように書く必要があります。該当分野の専門用語に精通しているであろう読者向けに書く場合以外は、技術的な専門用語の多用は避け、使用する場合は用語の定義を挿入すべきです。読者が自分と同じ専門的知識を持っていると勝手に想定してはいけません。親しみのない用語や情報に遭遇すると、読者は疎外感を感じ、読むのをやめてしまう可能性があります。
- 例えば、高度な医学教育を受けた医師の委員会に向けて問題提起を行う場合、「中手骨」という用語が何を指すかを読み手は知っているという前提で準備するのは妥当です。しかし医師と医学的教育を受けていない病院の大口投資家を同時に対象とする場合には、「中手骨(指の最初の2つの関節の間の骨)」として定義を添えるべきです。
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限定的な問題に焦点を合わせる 壮大でとりとめなく長い「作品」は、よい問題提起書とは言えません。容易に識別できる一つの問題とその解決策に的を絞ります。一般的に言って、話題を一定の範囲内に限った場合、広範囲にわたる議論によって焦点が曖昧になった文章より説得力があります。問題提起書のスコープは(提案書のスコープと同様)できるだけ的を絞ったものにするべきです。そうすることで提起文(あるいは提案書)が短縮されるのは、通常悪いことではありません(最低ページ数が指定された課題の場合はその限りではありません)。
- 大ざっぱに言って、疑いの余地なく決定的解決法のある問題のみを取り扱うべきです。問題全体の決定的な解決策が不確かな場合は、プロジェクトのカバー範囲を絞り込み、問題提起文を適宜修正します。
- 問題提起文でのスコープ管理には、提起文が含まれる論文全体や提案書の完成を待つのも有益な手段です。この場合、実際の文書をガイドラインにして問題提起文を作成することになり、議論を行う「予定」ではなく、実際に網羅された内容を記述することになります。
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「5つのW」に留意する 問題提起文はできる限り少ない単語で情報量を盛り込むべきなので、省略できる部分は削り落としましょう。何を記述すべきかを判断するには、5つのWあるいは六何の法則を参考にします。六何の法則とは、「誰(who)」が「何(what)」を、「どうやって(how)」、「なぜ(why)」、「いつ(when)」、「どこ(where)」で行ったのか、を最低限カバーするというルールです。5つのWや六何に答えるように記述することで、読み手は、不要なレベルの詳細情報に邪魔されることなく、問題と解決策を把握するのに十分な情報を得ることができます。
- 例えば、地元の市議会に新しいビル開発プロジェクトを提案するために問題提起書を準備する場合、「この開発は誰にとって有意義なのか」、「何が必要なのか」、「どこで開発が行われるべきか」、「いつ建設が開始されるべきか」、そして「なぜその開発が究極的にその市に有益なものとなるのか」を論じます。
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正式な文体を用いる ほとんどの場合、問題提起文は真剣な提案書やプロジェクトで使用されるので、正式な文語体で作成するべきです(本文で使用する文体と同様です)。明瞭で平易で直接的な言い回しを心がけます。人懐こいカジュアルな文体で読者の心を取り込もうとすべきではありません。ユーモアや冗談は挿入しません。無意味な余談や逸話も盛り込みません。俗語や口語体は避けます。問題提起文は、特定の目的で作成される文書であり、不要な文章に時間を浪費してはなりません。
- 人文科学論文で単に「娯楽的」な要素を記述することがないのと似ています。もちろん引用や題辞で始まる問題提起文もありうるでしょう。しかしその場合でも、引用する文章は本文と関連する内容であるべきで、提起書自体は文語で作成します。
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間違いがないか校正する これはどのような正式文書を準備する際にも必須となる作業です。注意深く校正した結果、質が向上しない草案はありません。文章を書き上げた後、ざっと読み返します。文章が「流れ」ているか、提示された意見は首尾一貫しているか、論理的に構成されているか、という観点から推敲します。最終的に文章の構造が納得のいくものとなったら、文字、文法、書式に間違いがないことを再確認します。
- 自分の作成した文章を再読および推敲したことを後悔することは決してありません。問題提起は通常、誰かに読んでもらう提案書や報告書の導入部の役割を果たすので、ここで誤りを犯すのは特に厄介です。続く文書全体に対する印象が悪くなることさえあるのです。
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